2018.05.18インフォメーション
「リズと青い鳥」若手女性スタッフによる座談会トークを公開!
「リズと青い鳥」製作関連各社のスタッフによる座談会を実施!
今回は、若手女性スタッフによる映画への率直な感想や、学生時代あるあるなど、さながら女子会の様相を呈したカオスな座談会の様子をお届けします!
Q(K社):まず、映画の率直な感想をお伺いしたいと思いますが、その前に……みなさん『響け!ユーフォニアム』シリーズはご覧になっていましたか?
L社:私は担当だったので(笑) 。
P社:私も全部見ていました!
T社:私は原作小説と、アニメの一期と劇場版の2作です。
S社:私は見ていないです。
Q:それぞれの見方が違って、色んな立場からお話をお伺いできそうですね。
S社:そうですね。私は『ユーフォ』シリーズを見ていなくて、さらに原作未読でアニメ自体も普段は見ないのですが、今回の映画では希美が高校1年生のときに吹奏樂部をやめてしまって、でもまた戻ったという所もちゃんと描かれていたので、スムーズに必要な情報が入ってきてとても見やすい作品でした。
Q:二人の関係について、どう感じられましたか?
T社:希美とみぞれの関係についていいなと思ったのが、お互いの気持ちを簡単に分かりあうことのできない、欲しいものにズレのある二人の関係のリアルさです。気持ちをぶつけあった後に、少し距離が近づいて、並んで歩いていける一瞬がある。そういう関係って本当に素敵だと思いました。
P社:『ユーフォ』シリーズだとみぞれと希美は「全体の中の二人」であって、チームとしてうまくいかないところとか、女の子たちが集まるとこういうことあるよね!っていう部分が丁寧に描かれていると思うのですが、今回の『リズと青い鳥』はみぞれと希美をピックアップして焦点を当てているので、二人の仕草とか会話の間とかが、ものすごくリアルで。だからこそ自分と照らし合わせてしまって恥ずかしくなりました(笑)。友達との関係を思い出して……。そういったこともあって、自分に近い目線で観られた映画でした。
Q:はじめてご覧になったとき、みぞれと希美、どちらの目線で見られましたか?
S社:みぞれです。
T社:みぞれですね。
L社:みぞれですかね。
P社:私も最初はみぞれの目線で見ていたのですが、途中からは希美に感情移入しました。みぞれの方が口数は少ないけれど、でも実は自分の感情を素直に相手に伝えられるし分かりやすく素直なんですが、希美は素直になれず、ちょっと大人ぶってしまったり取り繕ってしまったりするところが自分の過去と照らし合わせるとリアル過ぎて。終盤にかけて涙してしまうところがありました。
Q:希美もよく自分の在りようを受け止められたなと思いますよね。
T社:飲み込んだときの希美の表情や仕草に、思わずうわー!っと。見ちゃいけないものを見てしまった……っていう気持ちになりました……。
S社:友達としてすごく好きって言うのと実際の楽器の実力ってのは本当は切り替えて考えなくてはいけないけど、高校生はそれだけではない難しい部分もありますよね。
T社:私はみぞれの、好きな人への気持ちに共感しました。階段を上った希美が、後ろをついてきているみぞれを手すりから覗いて確認するシーンがあるんですけど、そこでみぞれがびっくりして、でも嬉しくてパチパチと瞬きするんです。こういう気持ち分かるなって。思いがけず好きな子に気にかけられたときのドキドキが伝わってくるようでした。途中からみぞれだけでなく、希美のコンプレックスも感じ始めると、二人ともに共感してしまってちょっと苦しかったです。
L社:私も初めて見たときはみぞれに共感して見ていたのですが、2回目以降は希美の感情もすごく良く分かるようになりました。映像の美しさもあって、本当にどんどん共感していきました。 童話『リズと青い鳥』のパートも最初は可愛く見ていたのですが、クロスしていくところでドンドン感情移入しちゃって。最後の演奏シーンは涙が止まらなかったです。何度も見たい映画だと思いました。
Q:本当に何度でも見られますよね。
L社:そうですね。1度見たときに気付いた点を踏まえて、次に見たときに違った視点で見ると新しい発見が何度もある作品です。自分の気持ち次第ではキャラクターのセリフも違った印象でした。
実は最初は希美が苦手だったんです。自分に自信があるという感情が自分にはないので、フルートのパート練習も羨ましいという気持ちもありながら、自分には入れないなと思ったり。でも、最後まで見たら実は希美もすごく葛藤しているのがわかって。音大のくだりとか、大好きのハグを断るところも1回目のときは「性格悪っ」て思ったんですが(笑)、2回目は希美に感情移入していたので、はぐらかした理由を考えていくととても愛おしく思えました。
Q:希美は優しい子ですよね。
L社:そうなんですよ! 本当にもどかしくて女の子のグルグルする感じをそのまま見ているようで、喋っているだけでたまらない気持ちになります。お話の内容がすごく特別なヒーローとか出てくるわけでもないし、何か大事件があるわけじゃなく、ただ本当に二人の日常を切り取って、一つの作品が成立していることが素晴らしいと思いました。
Q:みなさんは楽器はされていましたか?
L社:私は高校のときにテナーサックスをやっていました。それもあってか部活内や日常の妬みなどグループ特有の(笑)、女の子がたくさん集まるという感情が理解できて……。
P社:そうなんですよね! ピリピリした感じとか(笑) 。日常シーンも、朝、フルートパートが集まって朝ごはんの話をしているところとかリアルでしたね。
L社:私はテナーサックスが一人しかいなかったのでパート練も一人だったんですが、グループは羨ましかったですね。
P社:テナーサックスはどちらかといえば映画で言うところのダブルリード側ですよね(笑)?
L社:そうそう(笑) 。独り教室の隅で練習していたのですが、下の方でワイワイしているのを見ていた記憶があって。疎外感とかグループに入りたいと言えないもどかしさとかありましたね。
P社:私はクラリネットをやっていたので、映画の中ではフルートパート側に近かったです。みんなでワイワイ練習しつつ、おしゃべりなどをしていました。あと、みぞれに新しく後輩ができて希美が不安を抱き始める、というのもリアルだなと思いました。女の子って二人だとうまくいくんですが、三人になるとちょっと不穏な空気が流れるって法則ないですか(笑)?
L社:あります(笑)。
P社:恋愛にも似た感情のすれ違いがリアルだなと思いました。私は女子高だったからかもですが。
T社:自分以外の二人に対して、片方の子の方が好きっていう子がいると余計にこじれますね。
P社:最初から三人グループだと良いんですけど、二人の中にもう一人が入ってくると……ちょっと難しくなったりしますよね。今回はその三人目が「後輩」っていう存在だったんじゃないかと。でもそれって実は高校生に限ったことじゃなくて。「皆、大人になったから抑えているけど、そういうところあるよね」という感じを突きつけられた気がしました。
L社:私は中学生のときに二人組で仲が良かったんですけど、転校生が入ってきてその子とも仲良くなって、ちょっと不穏になったときに女性の担任に言われた一言が、「女の子3人は無理だから」。
一同:(笑) 。
L社:結構ショックでした(笑) 。
Q:三人ってうまくいかないものですかね(笑)?
S社:私は三人でうまくいってましたね。
P社:それは大人ですね!
S社:どうしても意見が分かれたら、2対1になったりしますけどバランスが取れてましたね(笑)
L社:女の子はとくに今でいうズッ友……
(立ち会っている)男性一同:ズッ友……?
L社:ずっと友達という意味です(笑)!
S社:それ、プリクラのスタンプとかでありましたね!
女性一同:(盛り上がる)
L社:私も、何か浮気されたってわけじゃないんですが、私が一番じゃなかったの?って思うこともありました。すごく可愛い後輩とかが現れて一緒にご飯に行くと、もしかしたら二人で喋りたかったのにって思わせてしまったかもしれないなと思ったり。
P社:なんであの子と? という気持ちは口には出さないのですが、ちょっとモヤってしますよね(笑)。
T社:希美がみぞれにお祭りを誘うシーンで、優子と夏紀も誘ったときのみぞれの表情が曇るシーンとか……。
P社:それです! それです!
L社:プールを誘うシーンでもみぞれが後輩の子を誘って良いか聞くと希美が凄い微妙そうな表情をするところとか!
P社:そうなんです!! あれが凄かった!
T社:私は、人に見られていると意識していない女の子の表情とか仕草とかを覗いているのをとても感じて、たまらんなと思いました(笑)。
一同:(笑)。
L社:すごく分かります! 階段でずっと追いかけているところとか、不安を解消するためにやる仕草とか。
T社:スカートとか、歩き方とか。童話パートのときの青い鳥の少女のスカートがぶわっとひろがるところは、絵本の世界感が出ていて本当に良かったです! そして本田望結ちゃんの声が本当に可愛かった!
P社:望結ちゃんの声がまっすぐ届いてくるところが本当に良かったですよね。普段の高校生活との対比にもなっていて。
L社:ストレートな表現が胸に刺さってきました。童話パートで「どこにもいかないで」とリズが言うのですが、現実世界で言葉にするのは勇気がいるし、童話の世界での表現があるからこそ、ああ、みぞれは「どこにもいかないで」って思っているんだなと。
P社:現実世界で口に出してしまうと少し重いですよね。童話世界の二人が代弁してくれるのが分かりやすかったです。
L社:より本音を描いているのが童話パートだなと。でも、結局リズも自己完結しているんですよね。
Q:それについては監督もおっしゃっていましたね。「リズ、話聞きなよ」って(笑)。
一同:(笑)。
L社:日本人独特のものかもしれませんが、自分を押し殺して他人に合わせる美学のようなものでしょうか。二回目見たときには童話パートのほうにも感情移入しちゃいましたね。
T社:寒くなってきたときに青い鳥が「リズはどこにいくの?」って聞いて、あっ、ずっとは一緒にいられないんだなって気づきました。青い鳥は渡り鳥だったんだと。それもあって、希美が「戻ってくれば良いじゃん」って言っていたのが印象的で。自己完結しているのが童話の方でも分かりました。途中の青い鳥の表現もとても良かったです。
Q:デカルコマニーという表現で、それも二人の関係性を表現しているというのも作品の象徴ですね。
T社:描き方からもう映画の演出になっているんですね! あの青い鳥は印象的で、私の中で今でもずっと飛んでいます(笑)。
L社:音楽面でも牛尾憲輔さんも同じ表現を使っていましたね。スキャニングしたものなどもブックレットに入っております! 4月25日に発売しておりますので、ぜひCDを買って見ていただきたい(笑)!
Q:改めて本編を見ると世代や性別によって色んな感じ方が変わる作品になっていますが、みなさんはいかがでしたか。
L社:学生時代だったはこうだったなって、自分の中で過去のものにできているからこそ見れるのかもしれないですね。今の世代の子が見たらどう思うのかは気になります。
P社:もしかしたら、今まさに学生の方は気がつかないかもしれないこともあるのかもしれないですね。私たちは学生を卒業して外から見ているから、自身の過去を振り返って恥ずかしく感じたりするのかもしれないです。
Q:試写会では泣いている女子高生もいましたね。
L社:お話しの主軸はみぞれだけと思いがちですが、平行線に希美がいたというのに気付いた女子高生なんでしょうか。どちらかの気持ちに感情移入すると泣いちゃいますよね。
S社:私はどっちの気持ちも分かるので感情が二人の間でいったりきたりでした。最後のフルートとオーボエのソロで希美が泣いてしまったところからエンドロールまで泣いてました(笑)。本編で思った感情を判読しながらエンドロールを見ていたときに学生時代すごく辛かったけれど、忘れられないことや友達などを思い出して……。みぞれにとっては希美が全てで、女性同士の独占欲が強烈なんですよね。
Q:みぞれは、希美以外には本当に無関心ですよね。
T社:それがすごく、みぞれっぽいって思いました(笑)。
キャラクターといえば後輩の梨々花も可愛かったですね!
L社:実は、最初は警戒して見ていました。本当に本心で誘っているのか?って疑ってしまって(笑)。でも本当に先輩と仲良くしたいと思っている子で凄く可愛かったです。ゆでたまごも(笑)。
T社:突然のたまごですからね(笑)。
L社:希美以外でのみぞれの世界の突破口になりますしね。他のキャラクターたちが結構みぞれを気にかけている描写が多くて、そういう意味では希美は少し可哀そうかもしれないですね。周りに友達は多くいますが、本心を見抜いて話してくれるキャラクターがいなくて、自分の中で葛藤して頑張っているんですよね。
P社:希美は『ユーフォ』シリーズでもそうかもしれないですが、人との壁を作りたがるキャラクターなのかなと。みぞれはいつも素のままだから周りが気づくきっかけを与えてくれるのですが、それを無意識に遠ざけてしまっているのが希美自身なんでしょうね。私も少し気持ちが分かる部分があります。私はパートリーダーだったのですが、周りを見ると自分よりも出来る人がいっぱいいて、それを自分で自覚しているから、「大丈夫大丈夫」って言い聞かせたりしていた経験があって、凄く良く分かりました。希美がみぞれに嫉妬するところは、「もうちょっと希美弱音見せなよ! そのほうが楽になれるよ!」って思いながらかなり自分と照らし合わせて見ていましたね。最後のシーンでの、希美からみぞれへのセリフで泣いてしまいました。
Q:みなさんそれぞれの過去に思い当たるところが多そうですね。
では、最後に代表してL社さんからメッセージをお願いいたします。
L社:いろんな方に見ていただきたい映画です。特に、『響け!ユーフォニアム』シリーズを見たことのない方にもぜひ見ていただきたいなと思います。
今までのシリーズを見ていないから見られない、と思ってしまうのはとても勿体ない事です。ただ一つの女子高生のお話として見ていただきたいなって思います。基本的には希美とみぞれの二人のお話しで、見る人全員が傍観者だと思うので、自分だったらという部分も含めて絶対どこかしらハマるのではないかと思います。世界に入り込んで自分と照らし合わせたりしながら、楽しんでいただけたらなと思います。
Q:ありがとうございました!